COMMENT

順不同

小島秀夫さん
(ゲームクリエイター)

ベトナム社会の知られざる
労働者階級に根ざす悪習(闇くじ)は、
観る者の心を砕き、
暗鬱とさせるだろう。
しかし、その闇をとらえた本作は、
凄まじい生命に満ち溢れ、
映画力が迸っている。
さらに、家族と再会する為に
奔走し続けるロムの姿には、
強かで尊い光明さえ感じる。

SYOさん
(映画ライター)

何もかも呪いたくなるような時代に、
疲弊していた。
そんなとき、
異国の少年に教えられた。
「希望は、この先にしかない。
だから動くんだ」と。
諦念をぶっ飛ばす、活力の79分。
疾走感という言葉は、
きっとこの映画のためにある。

岩井志麻子さん
(作家)

人間の欲深さ愚かさ狡さ
を描きながら、
でも人間は優しく崇高で善良なもの、
という結末になり、
そう感動させられるのかと思いながら
観ていたのに、違った。
しかし、欲深く愚かで狡いからこそ、
人間って面白いのだ。
そして主人公はベトナムそのもの、
ホーチミンの擬人化だ。
とにかく、ギラギラと若い。
ともあれ、未来はこれからなのだ。

丸山ゴンザレスさん
(ジャーナリスト)

貧困層とギャンブルは相性がいい。
どんなリスクを負っても
夢見ることを選ぶのは、
生まれ変わる以外に唯一、
一発逆転する方法だからだ。
彼らにとってのギャンブルは
人生そのものなのだ。

相澤虎之助さん
(空族)

たかが数字。されど数字。
この映画は数字に翻弄され、
資本の奴隷たる我たちの姿を
これでもかと見せつける。
だがその果てに
どんなにハードな現実が訪れても
縦横無尽にストリートを右往左往する
ロムとフックの肉体が
いつしか数字を越えて
新たな地平へと羽ばたいてゆく。
これはまさにベトナム版
『ハーダー・ゼイ・カム』だ!!

内山拓也さん
(映画監督)

只者ではない。
それは冒頭のアングルを見れば
一目瞭然だ。
意図があるカメラポジションなのに、
その意図を忘れさせるぐらいの
自然な佇まい。
チャン・タン・フイ監督は、
世界が俯瞰で見えてしまっている。
突き付けられたベトナムの現状は、
現実と虚構の狭間を
いったりきたりして、
クラクラとする視界を
なんとか保つのが精一杯。

松崎健夫さん
(映画評論家)

社会は大人の都合や大人の理屈と
いった「大人の原理」で動いている。
そんな現実が子どもの夢や希望を
容赦なく打ち砕いてゆく。
それゆえ過酷な社会構造に抗い、
生き続けることを諦めない
ロムの姿に魂を揺さぶられる。

後藤岳史さん
(映画ライター)

サイゴンの活気あふれる街の鼓動、
映画をつらぬく
追跡と逃走の疾駆のリズム、
違法宝くじをめぐる裏町のきしみ、
悲劇とともに日常に沸き起こる
祝宴めいた爽快さが
大きな魅力になっている。
当局の検閲を受けての“工夫”をふくめ、
やってくれるなぁ、とすっかり感嘆。
才気あふれるチャン・タン・フイ監督
の名をしっかりと記憶したい。
この映画、ほんとに好きっ!

ハタメグミさん
(イラストレーター)

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ハタメグミさん
(イラストレーター)

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鈴木珠美さん
(ベトナム料理kitchen.シェフ)

エネルギッシュで美味しいものの
宝庫ベトナムの中にある光と影
ベトナムで出会った子供達、
選択の余地のない
絶望を忘れる程の過酷な現実
毎日を力強く走り抜けるロム
絶望から逃れる為の僅かな希望
彼が待ち望んでいる最も愛する
人のもとへ希望を取り戻し
夢を叶えるチャンスを
どうか与えてください

Screen Daily

怒れるギャンブラーや
ライバルに追われながら
「くじに当たれば褒められ、
外せば殴られる」
とつぶやく主人公と同様、
映画は一瞬たりとも
自己憐憫に浸ることなく、
膨大なエネルギーと勢いで展開する。
キレのいい編集と
決死のアクションにのって、
物語が狭い路地や雑踏、屋根裏、
バルコニー、窓を縦横無尽に駆け巡り、
観客に息をつかせないその様は
映画『ボーン』シリーズさながらだ。

Asian Movie Pulse

アクション、人間ドラマ、
社会的メッセージ、制作クオリティ—。
映画に必要なそれらすべてが
意気揚々と盛り込まれた、
今年(2019年)最高の一本。